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First Love Vol.1 ーがむしゃらなキスー

 このところずっと、なんとなく手持ちぶさたで、やる気のない日々を過ごしていた。気がついたら、もう11月。冷たい風が身にしみる、そんな季節に移り変わっている。

 夜も更けて、ようやく外出先から戻ったジュン。リビングには行かずにそのまま寝室へ入ると、肩にかけていたバックを床にぞんざいに放り投げ、クイーンサイズのベッドに、どさっと寝転がった。iPhoneをいじり、プレイリストのボタンを適当に押す。

 Cold Playの「A Sky Full of Stars」が、シンプルな机と一人にしては大きなベッドの二つしかない、無機質な部屋に響き渡る。自慢のスピーカーから流れる、思い出にあふれすぎた曲たち。あの時の指輪が、机の上に無造作に転がり、痛い光を放っていた。


 本当は、このプレイリスト、消してしまいたかった。何度、その長い人差し指で、そのボタンを押そうとしたか。消してもすぐに、同じmusicリストを作ることができる。だから、
「決してしまえばいいんだ」
何度もそう思ったのに、できなかった。

 天井を見ながら、音楽を聴きながら、時計の針が規則正しく刻む時間を、やり過ごす。午前1時を回っているのに、まったく眠くない。何か考えることがあるわけでもない。ただ、白い天井の規則的な模様を眺めているだけ。しばらくして、最近習慣になってしまった「はあぁぁぁっ」という、投げやりな、でも長すぎる息を吐き出すと、もぞもぞと寝返りを打ちながら、居心地の良い自分の躰の形を探し始めた。

 寝る時は決まって、片腕を頭の下に置き、膝を自分の腹にくっつけるように曲げて小さくなるジュン。その大きな躰を、猫のようにまん丸にして縮こまり、そして、大好きな形を作る。ようやく、いったん体勢が決まってふと窓を見ると、深夜だというのに、高速道路を走る車のテールランプが赤い一本の線に連なり、いつしかそれが、滲んでいた。

 いつもより明るすぎる夜空。実家の夜空とは違って、星なんかほとんど見えない。それほど明るい。でも、今日は特別明るい気がして、ふと視線を上に上げると、満月に近い月が、冷たい光を放っていた。まるで自分に刺さるような、凍るような光。見たくなくて、でも、気になって、だから、じっとは見つめず、ちらっ、ちらっと、伺うように時々見る。

 高速を走る車をぼ〜っと眺めては、ちらっと月を見て、また、「一分間にどのくらいの車が通過するのか」と、今日習ってきた統計学の授業をなんとはなしに思い出しながら、そんなどうでもいいくだらないことを考えながら、連なる車の後ろ姿を眺め、また、ちらっと月を見る。

 少し目を離すと、すぐにどこかへ行ってしまう。気づいたら「太陽より、月の方が気まぐれだな」と、声に出していたジュン。誰もいないのに。誰か側にいるかのように、話しかけていた。ただの空虚に。自分の腕も、いつか、誰かを抱き込むような形をしていて、そんな自分に苦笑する。

 居心地の悪いこの刻。この場所。いつもならそれでも深夜2時を回れば、眠りにつけるのに、今日は、なんとなく自分のベスポジが定まらず、それを探していろんな体勢になっているうちに、薄手のシャツの裾がベルトをしていないジーンズからはみ出し、めくり上がった。

 露わになる少し浅黒い肌の腰回り。

 寒いはずなのに、冷たい風が躰に当たり、す〜す〜するのがなぜか心地よく、ジュンは、そのままシャツをズボンの中へとしまわず、うつ伏せになって一つ、猫のように背筋を思いっきりストレッチするかのように、大きな伸びをした。

 そのままの体勢で、ベッドにうつ伏せになったまま、長い手をそこらへんに伸ばす。至るところに伸ばしてみても、見つからない。

 「ここら辺に置いたのに。ああ、もうどこにいったんだよ」

 少しいらつきながら、動けばいいのに面倒くさがって、寝たまま長い手を手当たり次第に、むやみやたらに伸ばし続けた。見当もつけずに。今までは、やってくれる人がいたから、こんなことしなくてもすんだのに。いないから、自分がするしかない。
 しばらくそうしているうちに、ようやく大きな手がそれをつかみ、

「これこれ。なんでこんなとこにあるんだ?」

そうぶつくさいいながら、暖房ボタンを急いで押した。着痩せするタイプなのか、意外にもその腰回りは肉付きがよく分厚い。女性の腕では、多分回りきらなさそうなその腰。腰がこれなのだから、その上の胸は…。シャツの中に隠れたその胸の厚みと広がりを容易に想像させるその腰を暖めるために、リモコンの女の声が、無機質な声で伝えた。

 『外の温度8度。室内の温度14度です』

 「まじかよ。8度? どおりで寒いはずだよ。8度なんて。この前いったあの山の中と同じじゃないか」

そう言いながら、羽毛ぶとんに躰を滑り込ませる。すぐに温かみを持った空気の粒が、その大きく分厚すぎる上半身と、それを支えるには、細すぎる棒のようなひょろ長い脚を、じわじわと温めていった。
 
 ふとんの中でもぞもぞと動いていたかとおもうと、ジュンは、シャツのボタンをはずしベッドの外へと放り投げ、そしてきつかったジーンズも脱ぎ捨て、ベッドの外へと落とした。素っ裸になって羽毛ぶとんの温もりを、艶やかな肌のすべてで受け止める。心地良い開放感に包まれ、いつしか、夢の中へと落ちていった。




 「じゃ、俺たち、つきあおっか」

 「え…………」

 リコは驚いた。 ようやく、本当にようやく、自分の親友とその幼馴染に取り持ってもらい、学校帰りに喫茶店に行くことになったばかり。それなのに、とりとめのない話をしていたら、いきなりそう言われた。

 「だって……。今、初めて話したばかり……」

 戸惑うリコ。 

 「それに、じゃっ、て、何……」

 本当に自分のことを好きでそう言っているのか、その真意を測りかねた。自分が好きなこと、友達に聞いてもう知っているだろうから、彼女もいないし、付き合ってみるかって、それくらいのことなんじゃないか。そう疑うリコ。

 なぜなら、あまりにもあっけなかったから。付き合うことになるそのプロセスが。喫茶店で話せることだけでも舞い上がる勢いだったのに、いきなりの即日交際スタート。そんな風になるとは、夢にも思ってもいなかった。

 リコは、ジュンの事がずっと好きだった。いつからかというと、自分でもよく分からないが、多分…1年ちょっと、いや、2年くらいは好きだったんじゃないか、そう、今までのことを思い返す。



 その喫茶店からの帰り道。強い北風に背中を押されるように、自宅へと自転車を走らせながら、そう考える。ふらついていた。自転車のハンドルを握るその手が。顔がほてり、真っ赤になって自分がどこを走っているのかもよく分からない。



 「送ろうか……」

 そう、遠慮がちに、はにかむ顔で、顔を真っ赤にしてジュンは言った。




 ジュンを好きになった理由。

 同じクラスになんてなったことがないから、性格は分からない。ただ、その落ち着いて寡黙そうな佇まいと、階段を上ってくる時、下って行く時。185センチはある高い背をすぼめるようにしながら、友人たちの瞳に視線を合わせ、はにかむように話しているその姿。それを見るだけで、リコは幸せだった。

 好きだからそう感じるのだろう、とそう想いながらも、時々、視線がふと絡むような気がしていたリコ。そんな時、それだけでリコは舞い上がり、家に帰ってからも、ずっとその時の光景を、繰り返し繰り返し、幸せな気持ちで思い出していた。密かに入手したお気に入りのジュンの写真を見ながら。それで、十分幸せだった。

 たった10分の休み時間。ちょうど、自分の席の横にある窓越しに見える廊下と、それに続く階段。リコは、その時間になる前からそわそわしだし、隣の席に座る男子の話しかける言葉なんて、まるで耳に入らない。

 「ああ、通らないかな。ジュン……クン」

 そう想いながら、じっとガラス越しの廊下を見つめる。ただ、ひたすら待つ。待つだけのその時間。

 「この視線に、私の視線に気づいて、くれない、かな………」

でも、時々はそう想いながらも、やはり

 「見てるだけでいっか」

そう、つぶやく毎日。

 知ってもらいたい気持ちと、見つめるだけでいいという気持ちが、毎日、毎日交錯して、仲を取り持ってやろうとする女友達も男友達も、そんなリコを見ていられず、焦れに焦れていた。隣に座る、ジュンより背が高く187センチあるユウもそう。陸上部のエースで、全校生徒の憧れ的な存在だった。

 「………………だよね?」

ユウが何かを話しかけていることに、肩をつつかれてようやく気付いくリコ。

 「ん? 何? なんか言った?」

 「ごめん、聞いてなかった」


 一月前、文化祭が終わって打ち上げをした後、

 「後ろに、乗れよ」

 自分の自転車にまたがり、頬をふくらませ暗いのによくわかるようなまでの真っ赤な顔をして、後ろを振り返りながら、顎で自分の背中の後ろを指し示したユウ。

 「そうなるのかな。方向が一緒だし……」

ユウの気持ちを知って、友人たちが気を利かせ、いつしか二人きりになっていたユウとリコ。だが、心の中では、そんなことを想いながらも、リコは、頭の中でジュンのことを思っていた。だからまた言った。いつもの口癖を。

 「え…………」

 どうしていいか分からない時、聞こえているのに、つい口にしてしまうその言葉。どう言っていいか分からない時、出る言葉。その言葉を、今この瞬間も、口にしていた。





 喫茶店から出た二人。やっと人一人、すれ違えるか。そのくらいの細い路地。11月の冬空。学校が終わってからの喫茶店は、すでに辺りを暗闇の中に包んでいる。

 田舎のような市街地のような、そんな中途半端な街に住むジュンとリコ。同じ街に住んでいないから、お互いのこれまでのことなど全く知らず、これまで生きてきた環境も分からず、とにかく、話すことすべてが新鮮だった。

 ログハウス造りで、JAZZが静かに流れる、路地裏の喫茶店。店内にはマスター1人しかおらず、どの学校がすぐに分かる制服姿の二人には、二人だけのその場所が、居心地がいいような、でも、じっと見られているような息苦しい気持ちとが入り混じる。その空気を破るかのように、

 「これが、俺たちの、初めてのデートだね」

 そう言いながら、笑ったジュンの頬に、えくぼがうっすらとできた。今まで、はにかむ顔か、憮然としているような顔しか見たことがなかったリコは、その笑顔に、思わず顔がひきつる。

 「ずるい………。ずるすぎる………」

 背が高すぎるほど高くて、肩までしかとどかないほどの高さで、整った顔をしているのに、笑うとこんなに可愛いなんて。

 絶句して、躰が固まるリコ。
 
 そんなリコにジュンは、そんな積極性などどこにもないような男に見えるのに、静かに、だが確実に、畳み掛けるように、ぐいぐいと言葉を押しつけてきた。



 「つきあおっか」

 さっき、言われたばかりのこの言葉。それなのに、リコの返事も聞かない先から、

 「これが初デートになるね」

 そんな言葉を当たり前のように、周りがぱっと明るくなるような笑顔をして言うジュン。

 簡単に、そんな言葉を言うような風には見えなかったのに、もしかして、これまでに、いろんな女子と付き合ってきたのかな、とそんな不安がよぎるリコ。すごく落ち着いているように見えて、何か先を急いでいるようにも思えるジュンに、リコは、少し焦りを感じ始めていた。


 本当は、ただ、喫茶店でお茶をするだけ、そう思ってついてきたのに、こんな言葉を突然言われ、嬉しくてたまらないのに、2年の想いがようやく、こんな形で信じられない状況で、天からいきなり降ってきたように、成就しているのに、その一方で、不安と疑念と焦りが入り混じる。

 だから、下を向くほかないリコ。なんと言ったらいいのか全くわからず、ただ、顔を赤くして、茶色に鈍く光る床を見つめることしかできなかった。

 「なぜ、私と付き合うの? こんな受験直前に。わざわざ」

 そう聞きたいのに、その簡単な言葉が聞けないリコ。付き合おう、とずっと好きだった人が言っているのに、逆に反対を向こうとしていた。この後におよんで、簡単には、踏み出せない自分。

 「ユウのこともあるし…。やっぱり、あの時踏み出さなきゃよかった」

 そう後悔する。喜びではにかむ顔と、不安で自分の瞳を睫毛で覆おってしまおうとする自分とが錯綜し、これ以上、ここにいるのが辛かった。


 「でようか。そろそろ」

 リコの気持ちを知ってか知らずか、ジュンが絶妙なタイミングでそう言った。

 この今の苦しすぎる気持ちを、心地よいまでに解放してくれたその言葉に、リコは、これまで感じたことのない、いいようのない快感を得た。先ほどからの、心地よすぎるこの空気感。やっぱり、自分は間違ってなかった、そう思った瞬間だった。

 細い階段を降り、帳の降りた細い路地に出た二人。自転車に手をかけながら、ジュンが言った。

 「リコ……ちゃん、って呼んでいいかな。これから」

 また、あのはにかんだ、少しエクボをつくったあの顔で、今度は照れながら言った。

 「うん……」

 素直にジュンを振り返りながら答えるリコ。

 その瞬間………。

 自転車のサドルに回した手を掴まれ、その自転車もろごとリコの後ろにあった壁にぐいっと押し付けられ、

 その乾いた唇をもっと乾いた唇が覆った。

 息が……続かない。息が……。

 ジュンの胸の中に包みこまれ、覆われるようにして、真っ暗に降りた帳の中に隠れていく二人。ジュンの首。フックが外れたツメエリの白いカラーが、リコの顎に当たる。

 「いたっ」

 思わずそう、すでに覆われてしまったジュンの唇の中で、つぶやくリコ。あまりにも突然の出来事に驚き、状況がよくわからず。目を見開いて冷静すぎる自分がいた。


 背の高さが違いすぎて、合わせたいのにうまくいかないジュンは、必死に、その背中を本当に必死に、いつも猫背の背中をもっと丸め、そしてリコよりも先に瞳を閉じていた。その細い指が、リコの顎を掴み自分の方へ強引に向け、そして、その渇ききった唇を、リコにがむしゃらに押し当てる。


FIRST KISS


 お互いに、遅いファーストキスだった。


 ジュンは、リコの唇に併せるだけでは物足りず、さっきの会話のように、いつもの佇まいとはまるで別人のように、もっと、もっとと、ぐいぐい躰を押し付けた。二人の間にある自転車がじゃまで、その長い腕で、必死にリコを手繰り寄せる。乾ききった唇から恐る恐る出入りし始めた舌が、戸惑い行先を求めるように彷徨いながらも、焦りで硬く閉じられたリコの唇を割り、そして絡めた。
 熱い息ともに。

 はあっ はあっ

 そんな息が、耳をつんざくように聴える。リコは、茫然自失。崩れ落ちそうになる躰を、細身なのに意外にもがっしりしているジュンに抱きかかえられるように、自転車越しに持ち抱えられながら、息が止まるくらいになるまで、顔が真っ赤になるまで、強く強く抱きしめられ、そして………唇の中のすべてを……奪われた。

 一体、何分のFirst Kiss だったのだろうか。

 本当に息が止まりそうになり、必死に自分を抱きしめ続けるジュンの胸を、バンバン叩こうと手をあげるリコ。そんなリコにようやく気付いたジュンは、リコのその上に上がった腕を静かに掴み、そして自分の背中に回すように「ここだよ」と誘導すると、おでこをくっつけ、荒い息を吐きながら、言った。


 「ごめん………」



 「いきなり。ごめん……」



 「でも……俺………。ずっと………」



 「ずっと………」 


 そう言い、再び、リコを自分の中へしまい込もうとするかのように、きつく抱きしめるジュン。二人の間にあった自転車が、きしむ。


 ジュンの冷たく震える手が、リコの背中を大事そうに、そろそろ、そろそろと、ずっとさすり、そしてその頬を、長く細い背中を一生懸命丸めながら、自分の頬で、こすり合わせるように撫で続けた。

 何度も何度も、リコの頬を、自分の頬で撫でるジュン。


 「帰し……たく………」


 「な……い……」


 掠れた、苦しそうな声を、やっとの思いで、吐き出すようにそう言うと、ジュンはリコの瞳を一度、恐る恐る伺うようにじっと見つめた。そして、リコの何かを感じると、苦しそうな表情に変え、一重なのに大きく印象的な自分の瞳を静かに閉じた。

 驚きで半開きになったままのリコの唇に、震えてがたがた言っているそんな唇を、今度は、静かに、そっと、そろそろと重ねていった。


 「ずっと……」


 「好き……………」


 「だったん……だ…………」

 
 「俺……………」



 その言葉を、ジュンはリコの唇の中で、震える躰で、でも静かに、はっきりと、伝えた。

 喫茶店の机にあった、ゆらゆらと穂先を揺らすキャンドルライトの炎のように静かに、でも、ずっと灯し続けていた炎が、す〜っと吹いた風で、その勢いを一気に増す。そんな熱を持った、ジュンのぷるんとした下唇と、形のよい上唇を、何度も、そして何度も、愛おしそうに、リコに重ね続けながら....。


よん ジュン……


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プロフィール

yukiyon3

Author:yukiyon3
イ・ミンホ主演ドラマ二次小説&オリジナル小説を書いています
オリジナル小説「First Love」
シンイー信義ー「チェ・ヨンの想い」
イ・ミンホ主演ドラマ統合二次小説 「The Five Kisses」

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